適材適所を把握する秘訣

如水は長政や諸家老を前に、上下の相性は不正の根源になる事があるので注意するように促しますが、これとは別に部下を適材適所に配置するための秘訣についても触れています。
 
「家老たる者の、威高ぶりて諸士に不禮(ぶれい)をし、末々の軽(かろ)き者には、詞(ことば)をも懸(かけ)ざるやうにする時は、下に遠くなる故に、諸士隔心して、上むきの軽薄ばかりつとむる故、諸人の善悪得手不得手しれず・・・」
家老が高慢な態度で振る舞うと、下のものの心が離れ、表面上の軽薄な儀礼ばかりになり、部下一人ひとりの人間性が把握できなくなる。
 
如水はこう続けます。
「諸士にも其身の不得手なる役をつとめさするに依て、必仕損(しそん)じ、品により其者身上をも滅ぼし、主君の為にもあしきもの也。」
そうなれば、部下を適材適所に配置できなくなり、不得意な仕事を与えられた者は必ず失敗し、事によっては身を亡ぼすことにもなる。これは主君にとってもよい事ではない。
 
そして最後にこう締めています。
「常に温和にして、小身なる者を近づけ、その者の気質をよく見つけて、相應(そうおう)の役を務めさすべし。」

参照/貝原益軒『黒田家譜(巻の十五)』