養生訓

83歳で、それまで記述しておいた文章を整理まとめて書いた本になります。 題名の通り、養生を促すための書物で、健康を維持し長生きをするための秘訣が語られています。 また健康に関することだけではなく、人生を生きて行く上での「考え方」、「気の持ち方」など、 年齢層に関わることなく役立ちそうな事が多数書かれています。
そして、この本の「後記」に益軒は次の通り記しています。

「この書は先人の言葉の意図するところを解り易く、誤りなく伝えるものである。 先輩方から聞いた話も多く収録し、自分で試して成果があったものは憶説になるかもしれないが記載した。 この通りこの本は養生の大綱である。 もし保養の道に志がある人はその他の多くの古人の書を読んで知識を高める事が大事である・・・」

益軒はこの「養生訓」を刊行した同年に陰から支え続けた妻・東軒を喪い、自身もその翌年に妻の後を追う様に亡くなります。 85歳という大往生でした。

「養生訓」を読んでみようと考える若い人は医学を目指す人の中にも多くはないのでしょうが、「養生」を「処世」と置き換えて読んでみると抵抗感なく受け入れられるのかもしれません。内容的に「養生」に直結するものもあるのですが、世の中を生きてゆくために役立つ心構えなどの記事も多く、若い人には「処世訓」として一度だけサラリと目を通していただければ、何か得るものがあるのかもしれません。

以下に「養生訓」を参照できるページへリンクを貼っています。

【「養生訓」に関する投稿】

禍は口より出で 投稿日2021年12月25日
禍自口出病自口入 佐藤一斎/言志録   言語を慎しまざれば、以て禍を招くに足り、飲食を慎しまざれば、以て病を致すに足る。諺に云う、禍は口より出で、病は口より入る。   元々「禍自口 [...]

衛生の道ちありて長生の薬なし 投稿日2021年3月11日
丘処機が、衛生の道ちありて長生の薬なし、といえるは、養生の道はあれど、うまれ付かざるいのちを、長くする薬はなし。只うまれ付きたる天年をたもつ道なり。 (養生の道はあるが、生まれついての命を伸ばす薬はな [...]

政治談義は二の次? 投稿日2019年12月15日
天下の事我が力になし難きことは唯天に任せおくべし その心を苦しむは愚なり 貝原益軒   尊王攘夷の志士たちはどう捉えたか分かりませんが、政治談義は居酒屋で済ませ、翌日には己の本職に精を出 [...]

楽しみを失なうべからず。 投稿日2019年10月6日
益軒は「養生訓」に次の通り書いています。 楽しまずして天地の道理にそむくべからず。 つねに道を以て欲を制して楽しみを失なうべからず。 楽しみを求めることは人として当たり前のことで、否定するこ [...]

めし食う時ぐらいは・・・ 投稿日2019年8月20日
怒の後、早く食すべからず。食後、怒るべからず。 憂ひて食すべからず。食して憂ふべからず。 頻繁に怒ってる人やいつも悩んでいる人に贈る言葉でしょうか。 健康のため、ご飯食べる時ぐらいは嫌なことを忘れま [...]

心は身の主也 投稿日2019年8月20日
心は身の主也、しずかにして安からしむべし。 身は心のやつこなり、うごかして労せしむべし。               養生訓 巻第一 [...]

皆美を好むべからず 投稿日2019年4月20日
すべての事に完璧を求めると、心のわずらいとなり余裕がなくなってしまう。 人に完璧を求めて、人の足らないところを怒ったり咎めれたりすれば、心のわずらいとなる。 また日用の飲食、衣服、器物、家居、草木など [...]

酒は衰微、花は半開。 投稿日2018年5月20日
「万(よろず)の事十分に満て、其(その)上にくは(加)へがたきは、うれいの本なり。古人の曰く、酒は微酔にのみ、花は半開に見る。」 (全ての事において、十分に満ち足りて、その上に加えることができない様な [...]

禍と福について 投稿日2018年5月16日
「命の長短は身の強弱によらず、慎と慎しまざるによれり。白楽天が語に、福と禍とは、慎と慎しまざるにあり、といえるが如し。」と養生訓で益軒は語っています。 (寿命は身体の強弱ではなく慎むか慎まないかで決ま [...]

養生の至れる法あり 投稿日2018年5月10日
益軒は「古人の教えに養生の至れる法あり」と養生訓で三人の言葉を挙げています。 孟子 「寡欲」(欲を寡[すく]なく) 王昭素 「身を養う事は欲を寡するにしくはなし」 [...]

衣食足りて栄辱を知る 投稿日2018年5月8日
養生訓の一節。 「一日も楽しまずして、はかなく、年月を過ぬるは、愚なりと云うべし。」 なるほど~生まれて来たからには、人生、楽しく生きるべきなのだ。 「たとえ家が貧しくて、幸なくして、飢えて死ぬとも、 [...]

あなどるべからず。迷うべからず。 投稿日2018年5月1日
養生訓巻第五には次のとおり書かかれてます。 「日月、星辰、北極、神廟に向って、大小便すべからず。又、日月のてらす地に小便すべからず。凡(おおよそ)天神、地祇(土地の神)、人鬼おそるべし。あなどるべから [...]

楽しみは極むべからず 投稿日2018年4月22日
五経の中の「礼記(らいき)」には「楽しみは極むべからず」とあります。 物事は極めてしまえば面白みが薄れるという言葉で、転じて「何事もほどほどに止め、やり過ぎはよろしからず」といった戒めの言葉なのかもし [...]

言に匪ずんば言うなかれ 投稿日2018年4月22日
「言に匪(あら)ずんば言うなかれ 由に匪ずんば語るなかれ」 これは高校の漢文または倫理社会で学んだ儒教の基礎となる書物・四書五経のひとつ「詩経」に書かれている言葉です。 「言わなくてよい事は発言しては [...]

不偏不党 投稿日2018年4月19日
益軒は「養生訓」巻第二の末項に次の通り書いています。 「後人、その偏見に従いて組するは何ぞや。凡(おおよそ)職見なければその才弁ある説に迷いて、偏執に泥(なず)む。」 (後世の人は、その偏見に簡単に [...]

人参が嫌いな子は読むべからず 投稿日2017年8月28日
益軒は養生訓・巻第三の末にこう書いています。 「心口にかなわざる物、食うべからず」 講談社学術文庫「養生訓」の訳者・伊藤友信氏は「心口にかなわざる物」を「口に合わず気に入らないもの」と訳しています [...]

宝石で雀を撃つが如し 投稿日2017年8月5日
益軒は「養生訓」で次の通り語っています。 「宝石を礫(つぶて・石ころ)として雀を撃たば、愚なりとて、人必ず笑はん。・・・中略・・・かろき小なる欲を貪りて身を損なうは、軽重を知らずというべし。」 これは [...]

咎むべからず。憂うべからず。 投稿日2017年1月26日
貝原益軒は著書「養生訓」に次のような事を記述しています。 「世の中の人の行動が、自分の意にそわなくても、『人とはそんなものだ』と考えて、人の悪いところは、なだめ、許して、咎めてはいけない。そして怒っ [...]

酒食を過すは腹中を戦場となすが如し 投稿日2016年12月31日
胃腸を酷使する時期も山場を迎え、正月明けには胃腸薬のお世話になる人も多いのかもしれません。 ところで、貝原益軒の「養生訓」には過酒食について次の通り書かれています。 「酒食を過ぎると、強い薬を用いな [...]

養生訓「怒」と「欲」について 投稿日2016年12月25日
貝原益軒は著書「養生訓」で怒りと欲について次のような事を語っています。 「怒と欲との二つ、最も徳を破り生を失う。怒りを懲らし、欲を塞ぐは易の戒めなり。怒りは火が燃ゆるが如し。人の心を乱し、元気を損な [...]

酔っぱらいは芸術家? 投稿日2016年8月2日
またまた飲酒の話になりますが、貝原益軒は「養生訓」に多飲の戒めとして次の通り記しています。 「生来謹厳な人も多く飲めば、欲深くなってみぐるしく、平常心を失い乱れてしまう。言行ともども狂ったようで、日 [...]

酒は天の美禄なり 投稿日2016年7月2日
貝原益軒は養生訓で「飲酒」について次のように語っています。 「酒は天の美禄である。少量の飲酒であれば陽気になり血行も良くなり、食欲も出て、愁いを忘れ、やる気が起こり、たいへん利益がある。ただし多量に [...]

ただいま禁煙中・・・ 投稿日2016年6月19日
禁煙するのは簡単ですが、タバコを止めるのは難しい・・・。 禁煙すること数十回、最高2年間やめましたが、ストレスでここ1年間喫煙中でした。 ところで江戸時代の儒学者・貝原益軒はタバコについて名著・養生訓 [...]