武蔵と伊織の出会い

武蔵が出羽を旅していた時の事、正法寺原辺りでドジョウを桶に入れた十三四の少年と出会います。空腹の武蔵は、そのドジョウを何匹か所望するも、少年は笑って桶ごと武蔵に渡し去って行きました。
翌日、武蔵は旅を続けますが、日も暮始め泊まる宿も見つからず途方にくれます。その時、山陰にポツンと灯る明かりを発見。そこに武蔵は一夜の宿りを求めますが、一軒家から顔を出したのがどうした事か、昨日にドジョウをもらい受けた少年でした。どうにか一夜の宿を得ることができた武蔵でしたが・・・
就寝後の「夜半過る、此に刃を磨音切々として枕に響き」と『二天記』には書かれています。
異音に目を覚まし警戒する武蔵に対し少年は次のように答えています。
「客(武蔵の事)は剛強なる顔付に似合わず臆病なる人なり」・・・

この話の続きは、日本昔ばなしの『牛方と山姥』または『三枚のお札』を上回るほどの恐ろし展開になるのでここで止めておきます。知りたい方は国会図書館の『二天記』をご参照ください。

結果としてここで登場する少年が後の伊織で、父母を亡くし、嫁に行った姉とは音信不通の少年は以後、武蔵に従って旅をすることになります。


正法寺原・・・現在の秋田県横手市。横手城城下で横手川を挟んだ南西に位置する辺りのようです。