怒りを以って師を興すべからず

『孫子 -火攻篇第十二-』に書かれている言葉です。


主は怒りを以って師を興(おこ)すべからず。
将は愠(いきどお)りを以って戦うべからず。
利に合えばすなわち動き、利に合わなければすなわち止む。
怒りは復(ま)た喜びをなし、愠りは復た悦をなすも、亡国は復た存すべからず。死者は復た生くべからず。
故に明君は之(これ)を慎み、良将は之を警(いまし)む。
これ国を安んじ、軍を全うするの道なり。

 
君主は怒りに駆られて戦争を起こしてはならないし、将軍は憤りに任せて戦うような事があってはならない。利益に合えば動き、利益に合わなければ止める。
時が経てば、怒りや憤りは喜びに変わるが、亡びた国は二度と戻ることはなく、死者は生き返る事はない。
だから、名君はこれを慎み、名将はこれを戒める必要がある。
これが国を安定させ、軍を維持するための方法である。


師を興す・・・「師」は軍の事。軍を発する。戦いを始める。
明君・・・心得のある君主。名君。