利を求むれば、必ず、害あり。福を求むれば、必ず、禍あり。故に、韓詩外傳に曰く、利は害の本(もと)、福は害の先とす。 ・・・ 只、わが身を慎み、分を安んじ、わが職分を力(つと)めて、天命にまかすべし。利とは、財利のみにあらず。
貝原益軒はこのように『大和俗訓-心術下ー』に書き、財利を貪る事を戒めています。そして、その後このように続けます。
欲すくなくして、わが身の足ること知るものは、分限を安んじて、貧賤にしても、亦(また)、楽しむ。楽しむ者は常に慊(あきた)る。欲多くして、足ることを知らざるものは、富貴にしても、分限を知らずして、慊らず。慊らざる者は、楽しむことを知らずして、外に求めてやまず。つひに、禍となること、亦多し。
そして、益軒は楽しみについてこのように語ります。
楽しみは、人の心に生れつきたる天機にして、本、自らこれあり ・・・ 天地の道、陰陽の化、四時のめぐりは常に和気あり。是(こ)れ天地の楽しみなり。此(この)楽しみ、ただ人にあるのみあらず。鳶(とび)の飛ひ、魚の躍るも、凡(おおよ)そ、禽獣の囀(さえず)り啼(な)くも。木草の栄(さか)え、花咲き実結(みの)るも、みな是れ、天機の発生する所、萬物自然の楽しみなり。
このように、外に財利を欲するよりも我が身に授かる楽しみを実感することが大切であると言っています。
韓詩外傳・・・前漢の時代に儒者・韓嬰によって記された書
分を安んじ・・・分限をわきまえる
慊る・・・満足する
天機・・・自然の機微、自然の変容、変転
本、自らこれあり・・・生れつき備わっている
天地の道・・・自然を司る法則
陰陽の化・・・陰と陽の変化
四時・・・四季