径路の窄き処は・・・

径路の窄(せま)き処は一歩を留めて人の行くに与えよ
通りの狭い所では、一歩留まって対面の人に道を譲りなさい

菜根譚/洪自誠

 
「背水の陣」で有名な韓信は若い頃、市場で荒くれどもを引き連れた若者から「お前は体はでかく、刀はさげているが、根は臆病者に違いない」と難癖をつけられます。若者は続けて「その刀で俺を刺し殺してみろ、それができなければ俺の股の下をくぐって見せろ」と脅します。韓信は相手をじっと見つめた後に、この若者の股を腹這いになってくぐります。これに周りの者は韓信の臆病な姿をみて笑い合ます。しかし、後に韓信は漢の創始者・劉邦を軍事面で支え、漢帝国を興す大功労者となるのです。これが「韓信の股くぐり」と言われる逸話になります。
志を高く持つ者は目先のプライドや損得に囚われることなく、自身の目指す処を見据える姿勢が必要なのかもしれません。
 
冒頭の「・・・一歩を留めて人の行くに与えよ」は個人的に『菜根譚』を代表する言葉だと感じます。これを実践するか、しないかの判断は個人の目指す処に依るのでしょうが、実践する事で肩をいからせて生きる必要もなくなるのではと思われます。
 


「韓信の股くぐり」は司馬遷の『史記』に記される逸話になります。