『氷川清話』(講談社学術文庫)は吉本襄(のぼる)が海舟に関する記事を収集し編集した『海舟先生氷川清話』を検証再編集した談話集。
『新訂海舟座談』(岩波文庫)は海舟宅に出入りしていた巌本善治が海舟から直接聞いた座談集。
どちらの本も海舟の江戸っ子らしい気風の良さが表現されてており、非常に面白い本になっています。
ただ『氷川清話』の編者、松浦玲氏、江藤淳氏は吉本襄の改ざんを指摘し、特に松浦氏はその改ざんを「けしからんふるまい」とまで書いています。
『新訂海舟座談』も100%正確に伝わる作品かは不明ですが、この座談集でも『氷川清話』について次にように触れています。
明治30年の秋ごろ、吉本襄が海舟を訪れて、海舟の談話を集めて出版させて欲しいと願い出ます。吉本の印象は悪くなかったようで海舟は「勝手にしなさい。」と許可を伝え、その後、「序文はお書きなさらぬが宜しいです。」と心配する巌本善治に対し「吉本はイイやツだよ。」と答えています。
そして1年後には吉本から「続々氷川清話」を編集する連絡が巌本の元に入りますが、巌本は情報の提供を断り、その事を海舟へ伝えます。
「そうかエ。もうよせばいいのに。前ので、もうかったということだ。・・・この間も、二度ほど来たから、断わって返した。」
吉本襄とはどんな人だろうと思い調べてみたのですが、その名前はWikiでは表示されませんでした。『氷川清話』の編者・松浦氏は吉本襄の『氷川清話』を徹底的に糾弾するものの、「勝海舟の代表的な談話集として長い生命を保ちえたのは、リライトによって読みやすくなったことが大きく作用しているのだろう。」とも書いています。