主義といひ、道といつて、必ずこれのみと断定するのは、おれは昔から好まない。
単に道といつても、道には大小薄濃淡の差がある。
しかるにその一を揚げて他を排斥するのは、おれの取らないところだ。
人が来て囂々(ごうごう)とおれを責める時には、おれはさうだらうと答えておいて争わない。
そして後から精密に考えてその大小を比較し、この上にも更に上があるのだらうと想うと、実に愉快で耐えられない。
勝海舟は氷川清話でこのように語り、思考の固執や他者の意見の否定を戒めています。
さらに状況に合った行動ができるよう常に手立てや筋道を模索することが重要であるといっています。
そして最後に、知恵の研究は棺桶の蓋をするときに終わるのだと締めています。