窮屈逼塞は天地の常道ではないヨ。

海舟は「氷川清話」に方針を固持してはいけないと書いています。
我に四角な箱を造って置いて、この箱に丸い物や三角の物を詰め込むのはご苦労千万な事だ。
執一の定見をもって天下を律せんとするのは、決して王道ではない。
鴨の足は短く、鶴の脛は長いが、それはそれぞれ用があるからだ。
反対者にはどしどし反対させておくのがよい。
我が行うところに間違いがないのであれば、彼らもいつか悟る時があるだろう。
窮屈逼塞は、天地の常道ではないヨ。

兵法孫子の行き着くところの柔軟性しかり、海舟の恐れた男・横井小楠の状況に合わせた切り替えの速さもしかりといったところでしょうか?
マー世間の方針々々という先生たちを見てご覧なさい。事がひとたび予定どおりに行かないと、周章狼狽して、そのざまは見られたものではないヨ。
幕末動乱期に敵は元より味方からも命を狙われた海舟だからこそ言える言葉なのかもしれません。