海舟の読書の勧め

海舟曰く「若い時は本が嫌いで手紙でも書きはしなかった。もと剣術遣いの方だからネ。四年ほど押し込められてる時に、隙(ひま)でしょうがないから読書したのサ。朝は西洋サ。昼は漢書。夜は日本の雑書でたいてい読んだよ。もう四年もやれば、よほどの学者になる。本読みになるのは楽なものだと、そう思ったよ。・・・」。
 
岩波文庫『新訂海舟座談』の付録に記載される大川周明の海舟座談の評論より。
 


四年ほど押し込められてる時・・・軍艦奉行を罷免された42歳から第二次長州征討の停戦交渉で長州に出張を命じられた44歳までの約2年とその前後の事だと思われます。
 
大川周明・・・大正から昭和にかけての思想家。A級戦犯に問われた東京裁判では、東条英機の頭部を叩くなどの奇行を繰り返しています。大川はこの評論で「情脆(もろ)いたちでありながら、どこか意地悪く、無類に辛抱強くて同時に激しい癇癪持ちであり、大局に通ずるとともにどんな細かいことにも気がつき、世態人情を知り抜いている・・・」と海舟の事を評しています。