武蔵、吉岡一門と乱闘

吉岡の門下生は相談して「兵術ではかなわない。策をめぐらして武蔵を撃つ」と吉岡亦七郎は決闘という名目で洛外の下松にて待ち合わす。しかしそこには彼の門下生数百人が兵杖や弓を以って武蔵を倒そうと待ち構える。日頃から先を知る才能があり、この義のない動きを察知して、自分の門下生に「お前たちは関わらず思いのまま早く退け」という。「敵は群れをなし隊をなすが、私が視るに浮雲の如し、何を恐れる事があるか、有散衆の敵である」と走り回る猟犬を追う猛獣の様に威を振るい、散々に追い散らして立ち去った。洛陽の人々はこの話を聞いて感嘆した。勇勢智謀、一人で以って万人を敵する事ができる者は、兵法の妙法を知るものである。

宮本伊織/小倉碑文

 

小倉碑文には「武蔵平日有知先之才察非義之働(武蔵は日頃から先を知る才能があり、この義のない動きを察知して)」と書かれており、ここに刻まれたことが事実であるならば、武蔵とはただならぬ天性の勘を持ち合わせてた人物だったのかもしれません。