筑前にも超能力者がいた?

-筑前に存在した幻術師・火亂-

「三国志演義」には于吉(うきつ)、華佗(かだ)、左慈(さじ)などの特殊な能力を持った人物が登場しますが、日本の戦国時代にも果心居士(かしんこじ)という不思議な能力を持った人物が現れ、信長や秀吉、家康といった時の人を翻弄したといわれています。この果心居士が実在の人物かどうかは読者の判断にお任せするしかないのですが、一説によるとこの人物は筑後の出身とする話があるようです。ところで博物学者の貝原益軒はこのような話にも興味があった様で「応仁の乱」が長引く文明(1469~1487)の時代、筑前別所村に火亂(からん)という山伏がいたことを「筑前国続風土記」で伝えています。
火亂は剣術の達人であり幻法(幻術)も身に着け、天性凶悪な性格で怪しげな行為を行ったため、所司(警察の長)はこれを討とうしますが、火亂はこの事を事前に察知し捕らえることができませんでした。そこで所司は火亂の弟子の式部という人物を招き火亂を討つよう依頼します。この対決では式部が火亂の右腕を打ち落としたことで勝負は決し、火亂は怒って「公命とはいえ、師を討つ罪は逃るべからず」と叫んだ後に討ち取られます。しかし その後、式部の親兄弟が様々な災いで亡くなったために式部は祟りを恐れ火亂の社を建立し祀りました。
貝原益軒はこの様に「火亂社」の謂(いわ)れを綴っています。