その鋒鋩を露すべからず

澹泊(たんぱく)の士、必ず濃艶(のうえん)なる者の疑う所となり、検飾(けんしょく)の人、多く放肆(ほうし)なる者の忌む所となる。君子、これに処し、もとより少しもその操履(そうり)を変ずべからず、またはなはだその鋒芒(ほうぼう)を露(あらわ)すべからず。
質素な人は、必ず派手好きの人から疑われ、厳しい人は、勝手気ままの者から煙たがられる。君子はこの様な状況でも、己の思うところを変るべきではない。しかし、その思いのために相手を激しく責めるような事もあってはならない。

洪自誠/菜根譚

 
操履・・・志、または信念。
鋒芒・・・刀槍の切っ先。転じて相手を激しく責める事。