勝海舟の先哲の書を見る詞

勝海舟は「先哲の書を見る詞」という書を書いています。

 
前略・・・ 傑出の輩少なからず。あるいは経綸の才識を具備せし者、あるいは高踏超凡なる者、あるいは往昔の古調を修むる者、あるいはインドの古義を明解する者、その他皆不撓の精神をもって、その道を自得し、有為の学者たるに恥じず、我が特に賞賚する数輩、今にしてその人見るべからずといえども、その手沢の存する者をもって、幽鬱無聊の時において、展覧、古人の境遇いかんを追懐すれば、不言の中、胸懐の快然たるを覚ゆるなり

参照:新訂 海舟座談 巌本善治/岩波文庫

 
このように書き、林羅山、荻生徂徠、室鳩巣、松尾芭蕉、与謝蕪村、白隠などと共に貝原益軒の名を挙げています。
 


経綸  ・・・ 国家を治めること。またその方法。
高踏超凡  ・・・ 世俗を超えて身を高く置くこと。
不撓 ・・・ くじけないこと。
賞賚 ・・・ 褒めたたえること。
手沢の存する者 ・・・ 長い間に使ってツヤの出た本や物。
幽鬱無聊の時 ・・・ 憂鬱な時や退屈な時。
追懐 ・・・ 過去の事に思いを馳せること。
胸懐の快然 ・・・ 胸のつかえが取れること。爽快感。